大会長挨拶

公益財団法人いわてリハビリテーションセンター
理事長 高橋 明

 2011年2月発行の医学雑誌「ランセット」に、1881年にエジプトのテーベで発掘された紀元前5〜7世紀のミイラが親趾に装着していた義肢を復元しての歩行実験が、つい最近行われたと報告されておりました。そのミイラと同じように親趾を失った人が2名被験者となり、麻をノリで固めて石膏で覆った義足は予想以上の性能を発揮。合目的で快適だったそうです。「必要は発明の母」とは使い古された言葉ですが、古代中国殷代からの鍼灸道具はそれ以前の石器時代の外科用の石=石鍼にさかのぼれますし、ヒッタイトやアッシリアの時代に登場したスポーク車輪付き戦車からヒントを得た車椅子らしき情景がギリシャ時代のツボや壁画には既に描かれています。人々が必要に応じて様々なものを工夫して生み出す開発力、応用力には常々驚くばかりですし、その作品やこれを巡るエピソードにも興味が尽きません。
 この3.11大震災でも大変な避難生活に瞠目すべき"作品"が現れました。"暖段はこベッド"がその代表です。避難所暮らしの多くは体育館の床にジベタリアンになりがちです。加えて季節はミゾレ雪が吹きつける北東北の早春でした。歩けばホコリが舞い、自分の体温しかすがるものがない中で、低体温症から体調を崩し関連死する人さえおられました。それを解決したのがダンボール箱を組み合わせて作る簡易ベッドです。起居を格段に楽にする高さと優れた断熱効果、紙製品ならではの手軽さ。大阪のダンボールメーカーさんが被災のTV番組をみていて発想されたとのことでしたが、実に見事なシードのニード変換でした。
 早速被災地に贈られたダンボールベッドでしたが、一部の避難所では使用法を知られないまま放置・山積みされた"タカラの山"が結構あり、ほかの援助物資と共に、実際に普及するまではタイムラグがあったところもありました。
 必要を形にする、今日はないものを明日にはあるものにする。モノはいつでも使う人と共にあります。「第28回リハ工学カンファレンスinいわて:絆をカタチに」の開催にあたり、現地スタッフを代表し歓迎のご挨拶を申し上げました。