大会長挨拶
国立障害者リハビリテーションセンター研究所 所長 諏訪 基

第24回リハ工学カンファレンスを国立障害者リハビリテーションセンターで開催できますことはこの上ない喜びであります。所沢が航空発祥の地であることに因んで今年のテーマは "飛翔"と致しました。
ノースカロライナ州キティホークでライト兄弟が人類初の動力付き飛行機の飛行に成功したのは1903年12月のことでした。空を飛ぶ鳥のように飛んでみたいというのは人類の長年の願望が叶ったのでした。その後、彼らの技術は航空工学に発展し、人々がジャンボジェット機で、安全にかつ快適に世界を旅行することを可能にしました。工学者は人々の素朴な願望に応えるための技術を生み出すのにその力量を発揮します。
リハ工学カンファレンスは、高齢者・障害者の生活の質の向上や維持を実現するための工学的支援技術とその利活用のついての研究成果の紹介や、リハビリテーションにおいて利用される工学・技術の問題を解決するための知恵の結集と方策の啓発活動などを通して、関係者が年に一度集まって交流する場を提供するために開催されます。この領域の技術は、利用者が本当に必要とすることは何かを知ることが基本であることは云うまでもありません。支援技術を必要とする、あるいは既存の支援機器などの利用経験を持つ当事者、支援するための技術の研究開発に携わっているエンジニア、リハビリテーション・介護・支援や障害者教育などの現場で働くスタッフなどが、互いに理解しうる言葉・方法で討論し、障害者のリハビリテーションに有効な工学・技術および情報に関する交流のネットワーク作りにご活用いただければ幸いです。
日本リハビリテーション工学協会が設立されて間もなく四分の一世紀となろうとしており、高齢者・障害者を取り巻く社会的環境が大きく変わってきています。素朴な願望こそ、真に役に立つ新しいリハビリテーション工学を育てます。高齢者・障害当事者を始め、リハビリテーションや支援に携わる人たちの素朴な願望に耳を傾けつつ、今一度リハビリテーション工学のあり方を考え直してみようではありませんか。
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実行委員長あいさつ
NO ネクタイ! NO "先生"!
国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部 井上 剛伸

リハ工学カンファレンスの特徴に、"ネクタイをしない!"、"お互いを、先生と呼ばない!"というのがあるのをご存じの方は多いと思います。今回のカンファレンスでは、なんでこんなことをやっているのか、もう一度考えなおしてみませんか?リハ工学カンファレンスは、福祉機器に関心のある人達が集い、みんな同じ立場で意見交換をする場であったはずです。ただ、ここ数年当事者の方々の参加が少なくなり、カンファレンス自体もなんとなく閉塞感が漂っているように思います。"リハ工学カンファレンスは偉い先生ばかりいて、敷居が高くて、行く気にならない"という当事者の声も聞かれます。会も20年を超えてくると、"まーこんなもんか"という雰囲気になるのは当然で、カンファレンスにきた人の中に、一人でも、感動を覚えて帰ってくれる人がいれば、それで良しとするべきかもしれません。
私が初めてリハ工学カンファレンスに参加したのは、第5回の東京です。とにかく、"熱い"人たちの集団だ、というのが印象でした。その頃に比べれば、リハ工学の専門性は確立され、専門的な知識はずいぶん蓄積されたはずです。その知識を普及するための事業も、いろいろ行われています。でも、そもそも私たちは専門家の集団なのでしょうか?"あーすれば、こうなる。"といういわゆる普通の専門性が、リハ工学の専門性なのでしょうか?当事者の方々と同じ立場で、同じ目線で、一緒にひとつの課題に取り組んでいく。そんな姿勢が、リハ工学の専門性なのではないでしょうか?そんなことは、当然わかっているし、日々実践している、と思っている方も多いことでしょう。でも、もう一度自分の専門を全部すてて、当事者の方々と向き合ってみませんか?専門家面をしない専門家になるのはとても大変なものです。ただそこにリハ工学の真の専門性が求められているように思います。
今回のカンファレンスでは、6月20日に開催したプレカンファレンスも含めて、当事者の方々にお話しいただく企画を多く盛り込むことにいたしました。(やり方の是非に関してはいろいろご意見があることと思います。ご議論いただければと思います。)また、いままでリハ工学カンファレンスではあまり話題にならなかった障害の当事者の方々にも、お声かけさせていただきました。当事者の方々の間でも福祉機器に関する興味や知識、必要度など、違いがあるはずです。ただ、いろいろな障害の方が同じ目線で考える機会を持ち、そこにリハ工学というキーワードが加わることで、新しいものや考えがきっと生まれてくるはずです。私自身の反省もこめて掲げた"当事者発のリハビリテーション工学"。"NOネクタイ"、"NO先生"で、社会を変える力を持とうではありませんか。
※"障害"は法律に基づき漢字を使わせていただきました。また、"福祉機器"は著者の所属の名称に基づき使用しております。道具から複雑な機器やソフトウェアも含めた意味としてご理解ください。
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(C) The 24th JCAART, 2009