協会誌最新号Vol.33/ No.2 (通巻110号)
特集「AIとロボットは支援者になれるのか」

AI とロボットは支援者になれるのか

協会誌33-2号 特集「AI とロボットは支援者になれるのか」は、看護学専攻の大学院生編集委員による発案です。当初は、「AI とロボット ―学習する支援機器―(仮)」というタイトル案でしたが、最終的な特集名は、新規編集委員を迎えての発刊前編集委員会の検討で定まりました。

「AI・ロボットがツールとしてどのように使われ始めているか、新たに何ができ、さらにいかなる課題が生じているか」(特集に込めた願い)。

 「実はAI の正体は、数式と数字を組み合わせたソフトウェアだ。・・・。東京大学発のベンチャー企業「LPixel」(東京都)は、MRI やMRA の画像から脳動脈瘤を自動的に探す「EIRL」を開発した。数秒間で瘤の可能性が高い部分に赤い印を付けてパソコン画面に表示する。・・・精神障害者の就職活動を支援する企業「LITALICO」(本社・東京都)が自殺の予防にAI を使い、・・・自殺率は導入から1年でさらに半分以下に減ったという。・・・。AI は病気の早期発見を通して重症患者や要介護者を減らし、人材難の現場では強力な援軍になると期待される。」(総論 ー医療分野で活用される“AI”とはー)

 「福祉用具・介護ロボットは、それ自体を使用することが目的ではなく、利用者のできる可能性があること、もう少しうまく(楽に)できる可能性があることを引き出し、残存能力の維持・拡大を推進し、活動や参加に資する一手段である。」(福祉用具・介護ロボットに関する取り組み)

 「DeepLearning が苦手な機械制御分野にフォーカスした機械学習AI、DeepBinaryTree: DBT の特徴と可能性について記載する。・・・DBT は小脳的性質を持ち、機械制御・軌道予測・統計解析などが得意である。・・・波の影響をキャンセルしてその場で留まる船は漁業従事者への販売を予定しており・・・医療福祉分野におけるDBT の活用先として・・・個体差が大きい製品などの精度補正や、職人技で対応しているプロセスの代替などを想定している。」(深層学習とは異なる機械学習DeepBinaryTree ー機械制御発AI の可能性ー)

 「舌は、重度障がいの方でも機能が残存しやすく、様々な動きができることから、自分の意思を反映した第三の手として期待されています。・・・計測した筋電図を、人工知能が理解しやすいデータ(特徴量)へと変換したのち、舌の運動を学習させます。」(多チャンネル表面筋電図×人工知能による舌操作型電動車いすの開発)

 「日本人の死因第三位「肺炎」の主な原因は、嚥下障害による誤嚥性肺炎であり、誤嚥や窒息を未然に防ぎ、健康寿命を延伸するための新しい技術開発が求められています。・・・多チャンネル筋電図を観察することにより、たった数ml の一口量の違いをも識別できるようになりました。」(多チャンネル表面筋電図×人工知能による嚥下機能の見える化)

 「20 分を1 単位として時間単位で診療報酬を請求するリハ医療において・・・費用対効果の他、装着や準備に時間がかかること、機器の設定が複雑であること、患者の個別的な細かい設定は苦手なことなどの理由で、セラピストから敬遠されることも多い。・・・。学習機能付きの歩行支援型ロボットの開発には、技術面の発展の他、その基となる患者の膨大な動作解析データが必要となる。」(歩行支援型ロボット)

 「医療・福祉系、デザイン系、工学系の専門の異なる学生が混成チームを作り、異なった専門分野の学生と一緒に、障害のある人のニーズを考えて、その解決法を形にしてニーズ&アイデアフォーラム(NIF、以後NIFと略記)にて発表することとした。・・・。最初はセンサー付きのロボット技術応用を考えていたのに、最後は電子部品も電気装置もないモノになったり、車いす利用者の活動量測定を考えているうちに楽器になったり、視覚障害のある人にプラネタリウムを楽しんでもらうための工夫を考えているうちに、視覚以外で星や星の動きを体感するモノになったり、・・・。」(支援機器開発と学生育成)

 「フットサポートを上げ忘れてお尻を上げようとしたとき、音で知らせることを検討した。・・・試作してみるとチームのメンバーから「すごい」と言われ、驚かれた。・・・。チームでものを作るだけでなく、評価をしてもらうことこそ学生たちのやる気を促すことであった。」(ニーズ&アイデアフォーラムに参加して)
「A 鬼ロボットが「だるまさんがころんだ」と発声する間、利用者が実施する(座位での)足踏み運動に連動して、代理ロボットが鬼ロボットへ接近 B ライバルロボットは代理ロボットと同様に、自動的に鬼ロボットへ接近・・・。近隣の保健福祉センター利用者(主に65 歳以上の健康な高齢者男女、のべ約200 名)を主な被験者として、2011 年よりデモや実験を実施している。・・・。被験者の運動履歴とタブレット端末から入力される主観的疲労度に基づき、被験者に応じた適切な運動負荷を強化学習で設定可能である。」(対話ロボットとの対戦型ゲームにもとづく転倒予防システム開発)

 本特集を読み終え「学習した」AIは、リハ工学分野における自らの将来についていかなる予測判断をするのか?読者の感想と共に知りたいかぎりです。

 お知らせでは、福祉機器コンテスト30th、第33回リハ工学カンファレンスのほか、会員のみなさまに大切な事項が記されてます。

次回の特集は、「 遊び 最近の動向(仮題)」、お楽しみに!
(協会誌担当 石濱)

J-stageリハビリテーション・エンジニアリング誌