HOME の中の (> ガイドライン の中の (> 2.重度障害者用意思伝達装置の支給判定について - 2.2 特例補装具費としての判定

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2.2 特例補装具費としての判定

 補装具費は、購入基準および修理基準に該当する機器を、基準額以内で支給することが原則です。しかし、指針の規定に意思伝達装置を当てはめると、購入基準や修理基準にない方式や入力装置(スイッチ)等や、基準額を超える機器が本人にとって不可欠であり、真にやむを得ない場合には、「特例補装具費」として支給することが可能であるといえます。

<補装具費支給事務取扱指針>

第2 具体的事項

1 補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準の運用について、

(3) 特例補装具費の支給について

 身体障害者・児の障害の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情により、告示に定められた補装具の種目に該当するものであって、別表に定める名称、型式、基本構造等によることができない補装具(以下「特例補装具」という。)の購入又は修理に要する費用を支給する必要が生じた場合の取扱いは次のとおりとすること。

(出展:平成30年3月23日 障発0323第31号「補装具費支給事務取扱指針について」、
最終改正:令和元年9月12日 障発0912第2号)

 以下に、各地での特例補装具費の支給例をまとめます。これを前例として、一律の支給ではなく、当該対象者の身体状況や生活環境から判断して、真に特例補装具費での対応が必要であるのかの妥当性や、日常生活用具給付等事業、他の制度利用なども考慮して判定することが必要と考えます。

【参考:特例補装具費の支給例】

ソフトウェアのみを支給する例

 専用機器(1.参照)として供給される装置以外に、利用者が所有するパソコンに意思伝達装置の機能を有するソフトウェアをパソコンにインストールして利用する場合、そのソフトウェアにかかる購入費用は、特例補装具費としての対応は可能と考えられます。また、操作スイッチ類等は通常の支給が可能と考えます。

 本体を意思伝達装置とした利用だけでなく、パソコンとしての利用も想定としている場合には、「専用機器」に該当しないため、パソコン本体の購入費用および修理費用は補装具費支給対象外(自己負担)であると考えます。

 これに類する申請は、比較的多いものと予想されます。手続き上は、特例補装具費であっても、適合判定等で問題なければ、特例審査会を省略して、速やかに支給できるように、要項等で手順を定めている自治体もあります。

 「日常生活用具給付等事業の情報・通信支援用具」において、(平成13年度より5年間の時限的に実施された)障害者情報バリアフリー化支援事業に該当する品目を認めている市町村では、同等のソフトウェアは入手可能と考えられますが、補装具の場合には、「補装具事業者の責務」(A.2(2)参照)と「修理基準によるスイッチ交換」(A.3参照)があることが特筆する事項といえます。

修理基準外のスイッチ交換の例

 修理基準にある他の入力装置の使用が困難であり、修理基準にない操作スイッチ(例えば「分離型磁気センサー」等)しか使用出来ない場合には、特例補装具費の支給の可能性が考えられます。その際、他のスイッチ類の修理基準額と比較して妥当な範囲内で選択すべきと考えます。

本体修理の例

 本体としてのパソコン自体が故障した場合、著しい故障・破損等であれば、再支給が可能ですが、修理した方が安く、確実に直るものであれば、修理基準額を超える修理費であっても特例補装具費として支給することも検討可能と考えられます。

 ただし、ソフトウェアのみが支給されている場合や、専用機器と見なされる場合であっても、意思伝達装置機能の動作に影響しない機能の故障であれば、その部分は対象外(自費修理)とすることが妥当と考えられます。

(関連情報)
 なお、ここで修理対象となる本体の故障は、(基準額内であったとしても)ハードウェアのみと考えられます。本体を、ハードウェアとソフトウェアに切り分けて考えた場合、ソフトウェア自体が故障することはなく、仮にバグ等の不具合であれば、メーカー責任で改善されるものであります。意思伝達機能を持つソフトウェアの動作が不安定になったり、正常に動作しなくなったりするのは、供給段階で動作保証がある装置では考えにくく、原因としては、利用者が本体の「専用機器」の範疇を越えた利用(例えば、独自にソフトウェアをインストールした等)を行っている可能性が高く、この場合は、使用者の過失であり、自費修理が当然といえます。

 他方、ハードウェアの故障は、部品交換が必要になり、場合によっては、ソフトウェアや利用者の設定や作成した文書等を格納しているハードディスクの交換が必要な場合があります。このときは、ソフトウェアは納入時と同じものが設定(個人設定等が初期化)されることが専用機としての保証であり、この保証(再設定)は、修理費の対象と考えられます。

呼び鈴+スイッチ交換(操作スイッチ)の例

 次のような方の場合には、本体の支給なしに、修理基準に掲げる「操作スイッチと呼び鈴」のみを支給することも検討可能と考えられます。

  • 既に、通常の走査入力方式(タイミングをあわせながらの連続したスイッチ操作)による意思伝達装置(A.1参照)の操作が困難になってきているが、スイッチ操作自体はまだ可能な場合。
  • 対面での問いかけに対して、瞬きや表情などによる応答でのコミュニケーションが可能であり、スイッチ操作自体はまだ可能な場合。

 具体的には、次のような状態にあるかどうかを慎重に確認する必要があります。

  • (1)走査入力方式を利用して、意思を綴ることができないレベルであるが、生体現象を利用する方式(A.1参照)を使うレベルには至っていない段階であること。(両方式の中間段階の状態であり、対応できる本体がないこと。)
  • (2)スイッチ操作により、自らの意思で、介護者を呼び出すことができること。(意思伝達を始めるきっかけになること。)
  • (3)対面での問いかけに対して、自らの身体機能で応答できること。(生体現象を利用する方式よりも効率的な意思伝達が可能であること。)

 以上の状態でない方であって、単に呼び鈴だけを必要とする方は、ニーズとしては多いと予想されますが、支給対象外と考えることが妥当です(A.4(3)参照)

視線入力方式による意思伝達装置の例 [一部改定]

 平成29年度までは、視線入力方式による意思伝達装置については、その構成によっては、利用目的としては、意思伝達であることから補装具費における「重度障害者用意思伝達装置」の種目に該当し、当該装置の「視線入力方式」は、操作方法(名称)に規定されていないことから特例補装具に該当する可能性があるとしていました。

 今般、平成30年の告示改正では、修理基準に「視線検出式入力装置(スイッチ)交換」が追加されたことにより、原則はこの基準での対応となります。しかしながら、他の入力装置(スイッチ)で操作可能な文字等走査入力方式の本体に対して視線検出式入力装置(スイッチ)を後付けする以外に、以前からの一体型の製品(視線入力式の意思伝達装置)も引き続き販売されています。

 この一体型の場合は、価格と機能をふまえて検討すると、その基準額(本体価格+入力装置価格の積算額)を大きく超えることになり、同等安価の考え方には合致しません。しかしながら、申請者が一体型を希望した場合、指針にあるように、「身体障害者・児の障害の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情」について厳格な判定が必要です、その上、個々の申請者の環境から適切な判断を行った結果、申請者にとって一体型が真に必要であり、それが最も合理的と考えられるならば、特例補装具費としての支給対象になる可能性があります。

修理基準外の固定台(自立スタンド式)の例

 固定台については、当初の修理基準の中では1種目で定められていましたが、市場にある製品は、アーム式とテーブル置き式の2群に大別できます。基準額は、サイドテーブルに固定するタイプのアーム式のものと、テーブル置き式のものを想定していると考えられます。

 サイドテーブルを利用していない人の場合は、自立型のスタンド式固定台が必要になりますが、市販品の中には、基準額を超えるものもあります。そのため、この固定方法で利用する人にとっては、自己負担額が高くなりますが、日常生活用具等でサイドテーブルの給付を受けていない場合などでは、相当額を加算して特例補装具費としている例もありました。しかし、24年度改正で、修理基準に「固定台(自立スタンド式)」として追加されました。

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