協会誌最新号Vol.39/ No.1 (通巻133号)
特集「障がい者がスポーツとレクリエーションから得られる well-being」

入浴ケアの可能性

表紙データ(PDFファイル)

「特集にあたって 障がい者スポーツとレクリエーションから得られるwell-being」 高士 真奈
「自由である」と感じることは、自身をコントロールできたと思える瞬間があるかどうかである。また、自由さを感じることは健康な状態と強く関係をもっていると言われている。では、自身が健康な状態と感じるための活動には何があるのか?障害の有無問わずスポーツやレクリエーションを通して、well-beingを得られるための考察を深めていく。

「身体活動とウェルビーング 障がい者スポーツから自然体験活動まで」 島崎 崇史
「健康」と語る上で、様々な用語を整理していく必要がある。WHOの定義する健康の実現においてその過程に存在するウェルビーイング(Well-being)は人生の満足度を反映する重要な概念と捉えられている。
ウェルビーイングからQOL、ADL、ICFとの関連、ウェルビーイングを実現するためのウェルネス活動から、障がい者スポーツ・自然活動の意義について述べていく。多くの領域分野の先行研究をもとに、障害者への理解の促進やノーマイラゼーションの実現に向けて考察を深めていく。

「リハビリテーションにおける心理的な回復-入院中の高次脳機能障害者に対するレクリエーション的グループアプローチの取り組みから-」 白川 大平
交通事故などによる頭部外傷で脳損傷後に生じる障害である高次脳機能障害については、身体の麻痺が軽度であっても、障害によっては脳という認知機能の中枢が損傷されるため不適応状態に陥りやすいとも言われている。ここでは、筆者が行っている、入院中の高次脳機能障害者に対する職種の専門領域にとらわれないアプローチを紹介していく。レクリエーションの活動については、「楽しめる」という感情を基本とし、身体的にも社会的にも改善する活動を考案し、介入している。

「発達障害のある子どもに対する心理学に基づく療育アプローチ」 土屋 さとみ
発達障害は、脳の機能がアンバランスに発達し、コミュニケーションや認知、運動、行動、学習、社会性に偏りが見られる障害である。また、発達障害のある子どもは、得意なことと苦手なことの差が大きいため、生活の中で困難さを感じる場面が多くある。そのため子ども一人ひとりにあった自立・成長を促す支援が必要である。筆者が、支援として重要視している基本から運動の介入などの療育を紹介していく。また、療育の中でも、身体的なスキルの獲得だけではなく、認知的な側面の重要性を提示している。

「2歳で超高位頚椎損傷を受傷し成人した女性のウェルビーイング〜継続的なリハビリテーション治療・支援の先にあるもの〜」 小池 有美・芝寿 実子・山田 宏
超高位頚椎損傷を受傷したことにより小児期以前から呼吸器管理を要する子どもの一例を紹介していく。また日常生活から学校生活、社会参加にあたってどのような過程を踏んで、彼女がウェルビーイングを獲得してきたのかを丁寧に説明している。これらの背景には、多職種でチームを作り、障害における課題と向き合いながら支援を継続してきた様子が見受けられる。

「精神疾患のある人に対するセラピューティック・レクリエーション」 永田 真一
障害は大まかに、身体障がい、知的発達障がい、精神障がいの3種類に分類されている。身体、知的発達障がいについては理解が進んでいるものの、「目に見えない障がい」である精神障がいに関しての理解不足やスティグマが存在していると言える。筆者が専門とするセラピューティックレクリエーションは、健康とwell-being、生活の質を高めるために、余暇活動・レクリエーションを介入する支援方法がある。セラピューティックレクリエーションの枠組みやエビデンスを示しつつ、精神疾患のある方たちへの介入方法を紹介している。北米やオセアニアでは、このようなセラピューティックレクリエーションがリハビリテーション専門家として働いている。国内でもこのような支援の必要性を述べている。

「発達障害児・者の運動、スポーツ:その現状と運動介入がもたらすもの」 吉岡 尚美
発達障害児・者において、日常生活での習慣的な運動・スポーツの実施は十分とは言えない。また、発達障害児・者のスポーツ・レクリエーション参加の特徴として成人の参加率は低くく、個人で行う活動種目が多いため、他者との交流や楽しみを目的としている割合が低いことが報告されている。筆者は、これらの背景をもとに、発達障害児・者のスポーツ参加における障壁を調査し、どのようなスポーツ指導、運動の介入が効果的なのか調査研究している。また、スポーツのルールや用具を障害の種類や程度に適合させる、アダプテットスポーツの介入を紹介し、Well-beingへつなげる重要性を述べている。

「旅と海遊びで夢と幸せを作り出す」 栗原 亮太
障がいを持つ方もその周囲の人々も旅行や海の楽しみを共有することを目的としたユニバーサルデザインに特化した複合施設“ゼログラヴィティ清水ヴィラ”の紹介していく。また、障がいを考慮した対応から入念な準備、サポートにおけるコミュニケーションについてなど、利用者が安心してアクティビティができる配慮(おもてなし)を示している。ゼログラヴィティ清水ヴィラを利用した方々のリアルな声も報告され、国内では数少ない障がいの有無関係なく利用できる施設となっている。多くの方に周知してもらえることを願っている。

特集

特集にあたって 「障がい者がスポーツとレクリエーションから得られる well-being」(P1)
  • 高士 真奈
  • J-STAGE
特集 身体活動とウェルビーイング 障がい者スポーツから自然体験活動まで(P2)
  • 島崎 崇史
  • J-STAGE
特集 リハビリテーションにおける心理的な回復  ―入院中の高次脳機能障害者に対するレクリエーション的グループアプローチの取り組みから―(P9)
  • 白川 大平
  • J-STAGE
特集 発達障害のある子どもに対する心理学に基づく療育アプローチ(P15)
  • 土屋 さとみ
  • J-STAGE
特集 2歳で超高位頚髄損傷を受傷し成人した女性のウェルビーイング  〜継続的なリハビリテーション治療・支援の先にあるもの〜(P19)
  • 小池 有美、芝 寿実子、山田 宏
  • J-STAGE
特集 精神疾患のある人に対するセラピューティック・レクリエーション(P24)
  • 永田 真一
  • J-STAGE
特集 発達障害児・者の運動、スポーツ:その現状と運動介入がもたらすもの(P29)
  • 吉岡 尚美
  • J-STAGE
特集 旅と海遊びで夢と幸せを作り出す(P35)
  • 栗原 亮太
  • J-STAGE

研究論文

研究論文 脳卒中による短下肢装具使用経験者を対象とした短下肢装具と装具提供サービスに対するニーズの把握(P40)
  • 佐藤 健斗 、三富 菜々、春名 弘一、昆  恵介、小林 大二
  • J-STAGE

技術・開発報告

技術・開発報告 神経疲労状態の音声と自律神経反応との関係(P50)
  • 新谷 純 、小越 康宏
  • J-STAGE

連載

連載 「リハビリテーション・エンジニアリング」論文投稿のご案内〜論文を書こう@〜(P55)
  • 徳田 良英
  • J-STAGE
報告 H.C.R.2023への参加報告(P56)
  • 角住 由美
  • 報告
報告 第37回リハ工学カンファレンスin東京に参加して(P57)
  • 高柳 摩季
  • 報告
報告 第26回日本福祉のまちづくり学会全国大会に参加して(P59)
  • 小嶋 紅葉
  • 報告
報告 書評・芸術評 意識をデザインする仕事(P61)
  • 吉見 佳那子
  • 報告
報告 書評・芸術評 「生きるを支える」リハビリテーション(P62)
  • 廣島 拓也
  • 報告
J-stageリハビリテーション・エンジニアリング誌