HOME の中の (> ガイドライン の中の (> 2.重度障害者用意思伝達装置の支給判定について - 2.1 判定方法の種類と比較

[ここから本文です。]

2.重度障害者用意思伝達装置の支給判定について

 支給判定は、当該対象者に対して、意思伝達装置を補装具として支給することが適切か(指針の要件が満たされているか)を確認するもので、申請時の身体状況が指針における対象者(重度の両上下肢及び音声・言語機能障害者(難病患者等については、音声・言語機能障害及び神経・筋疾患)に該当するかどうか)を判定することになります。

 このとき、「筋萎縮性側索硬化症等の進行性疾患においては、急速な進行により支給要件を満たすことが確実と診断された場合は、早期支給を行うように配慮する必要がある」(平成25年2月12日自治体担当者会議資料P97)と示されているように、障害原因が急速な進行である場合には、十分な留意が必要といえます。

 原則として、要件を満たさない対象者への支給や、制度の趣旨に合わない機器は、本人にとって有効であっても、補装具費の支給対象外となります。

2.1 判定方法の種類と比較

 指針では、書類判定が可能とされているところですが、指針の趣旨は、直接判定を必要に応じて行うことを否定するものではありません。意思伝達装置の判定において、当該対象者の状態や使用環境、身体適合性を詳細に確認する必要がある場合には、直接判定を行うことが必要と考えます。

<補装具費支給事務取扱指針>
 判定依頼を受けた更生相談所は、申請のあった身体障害者について
  • (ア)  (省略)
  • (イ) 補聴器、車椅子(オーダーメイド)及び重度障害者用意思伝達装置に係る申請で、補装具費支給申請書等により判定できる場合は、当該申請書等により医学的判定を行い、(以下省略)
(出展:平成30年3月23日 障発0323第31号「補装具費支給事務取扱指針について」、
最終改正:令和元年9月12日 障発0912第2号)

 直接判定には、身更相まで直接判定を受けに行くこと(以下、来所)、または身更相が最寄りの会場を設定し、会場まで判定を受けに行くこと(以下、巡回)、それらが困難な場合は、身更相職員(医師、理学療法士、作業療法士等)が、自宅や施設まで訪問すること(以下、訪問)での判定方法があります。どの判定方法であっても、申請者の生活環境を含めた把握やフォローアップのために市町村職員が同行することが、本来の在り方だと考えられます。

 既に、補装具にて意思伝達装置の支給を受けている方からの、再支給の申請や、スイッチ適合が不要な修理申請においては、直接判定でなくても、書類判定で十分に対応できると考えます。しかし、補装具費として新規の申請の場合(※)には、当該対象者の使用環境を知り、その条件下での評価のためにも、直接判定(訪問等)を行うことや、保健師などとの連携が望ましいと考えます。

 ここでは、直接判定・書類判定それぞれのメリット・デメリットを整理してみました。

※過去に、旧制度の日常生活用具給付等事業や難病患者等日常生活用具給付事業により給付されていた場合や、本人が自費購入あるいは他人からの譲渡によって入手していた場合を含みます。

  直接判定 書類判定 
メリット
  • 利用者の状態や生活困難性を、身更相担当者が確実に把握できる。
  • 事前に市町村との調整が行われることから、生活状況や利用状況も把握できる。
  • 障害の状態や生活の状況等の確実な把握により公正・適切に判定可能。
  • デモ機などがあれば、その場で最低限の適合評価(操作可否の判断)も可能となる。
  • 直接判定(来所、巡回)の場までの移動が著しく困難な利用者であっても、判定が可能である。
  • 書類が整えば、日程調整が不要で申請から判定結果が得られるまでの期間が短い。
デメリット
  • 地理的に身更相が遠い場合、移動自体が困難な場合がある。
  • 日程調整を含め、判定結果が得られるまでの期間が一般的に長い。
  • 利用者の障害の状態や生活の状況の把握が不十分な場合、適合しない機種やスイッチが支給される可能性がある。
  • 地域のリハセンター等の専門的医療機関との連携がなければ、適合判断(スイッチ処方等)などが適切でない場合もある。
  • 生活状況の確認作業等で、行政機関間のやりとりが円滑でない場合には、かえって時間がかかる場合がある。

 このほか、

  • 真に必要な人には速やかに支給し、不要な人には支給しないことを適切に判断するためにも、書類判定だけでは困難と思われる場合は、直接判定が必要である。
  • 真に必要かどうかは、本人の身体状況のみだけで判断できず、本人や家族の生活状況等の社会的背景を考慮した上で、見極める必要がある。

などについても考慮する必要があります。

 以上を踏まえ、安易に書類判定とせずに、直接判定も視野に入れることで個々の対象者への適切な支給が促進されます。

 なおデモ機に関しては、取扱業者に依頼することが多いようですが、操作スイッチの適合は、多くの業者はノウハウが蓄積していない現状もあり、専門的な技術的知識を有する、身更相の職員、若しくは病院の理学療法士、作業療法士等が、身体状況等の評価を行った上で、適切な操作スイッチを選定することが重要です。

 デモ機としての意思伝達装置一式を、適合評価用備品として、すべての身更相で整備していない場合が多いようですが、身更相が判定に必要なデモ機や操作スイッチに関しては、ある程度の適合評価と選定が出来る範囲の整備は必要と考えます。

【参考:判定の流れ(例)】

直接判定の場合
  • 障害者が意思伝達装置の申請について市町村に相談する。
  • 市町村は在宅訪問等による調査を行う。
  • 障害者が申請を希望する場合は申請書類一式を市町村に提出。
  • 市町村は身更相と判定の事前調整を行う。(事前に調査書の記入ができるよう準備しておく。)
  • 身更相が判定日を調整の後、市町村に連絡し、市町村から申請者に判定日を通知。
  • 身更相への来所、巡回会場への来所、身更相による訪問のいずれかの方法で申請者と面談し、身更相が判定を行う。
  • 身更相は、申請者、市町村、業者の意見を参考に処方を決定。
  • 身更相は市町村に判定書を交付。
  • 市町村は補装具費支給決定通知書を申請者へ発行。
  • 業者は、処方内容に従い、機器の調整、申請者宅への訪問日を調整した後に、身更相に適合検査を依頼。
  • 身更相による適合検査。(市町村からの報告により身更相が認める場合もある。)
  • 補装具費の支払い。

    (代理受領の場合)申請者は、納品後、業者へ自己負担分を支払い、市町村は、業者に補装具費を支払う。

    (償還払いの場合)申請者は、納品後、業者へ全額一時立て替えて支払い、市町村から補装具費の支給を受ける。

書類判定の場合
  • 障害者が意思伝達装置の申請について市町村に相談する。
  • 市町村は在宅訪問等による調査を行う。
  • 障害者が申請を希望する場合は、病院等で医師意見書(処方箋)の作成を依頼。
  • 申請書類一式を市町村に提出。
  • 市町村は、在宅訪問等必要に応じて調査し、書類を整え、身更相に判定を依頼。
  • 身更相は書類を審査し、市町村に判定書を交付。
  • 市町村は補装具費支給決定通知書を申請者へ発行。
  • 業者は、処方内容に従い、機器の調整、申請者宅への訪問日を調整した後に納品。
  • 補装具費の支払い。

    (代理受領の場合)申請者は、納品後、業者へ自己負担分を支払い、市町村は、業者に補装具費を支払う。

    (償還払いの場合)申請者は、納品後、業者へ全額一時立て替えて支払い、市町村から補装具費の支給を受ける。

次(2.2節)へ 先頭へ 目次へ HOMEへ戻る