HOME の中の (> ガイドライン の中の (> 3.重度障害者用意思伝達装置の意見書・処方箋・調査書等 - 3.2 調査書・事前評価のポイント

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3.2 調査書・事前評価のポイント

 調査書は「社会的所見」からの判断を踏まえて、記載される必要があります。直接判定の場合であっても、市町村においては、これらの確認は必須と考えます。

 書類判定の場合、公正・適切な判定を行なうため、各市町村のケースワーカー等の事前調査をおこなう者が、窓口や電話、訪問による相談および評価によって、申請背景などを正確に把握することが必須です。

 ここでは身更相からは、医学的・社会的な支援が出来ない場合について、確認すべき内容を漏れのないようにチェックするために必要と考えられる書類と、その内容をまとめます。

(1) 調査書(基礎調査書)

 身更相の支援にかかわらず、市町村が、欠かすことの出来ない必須の調査です。
 この様式は、指針における別添様式例第2号であり、意思伝達装置専用である必要はなく、補装具共通で構いません。

 調査書を通して、補装具の制度の適用を受ける本人の確認、資格要件の有無、補装具が支給された場合の負担額等を確認する一般的な世帯調査書であり、「基礎調査書」と呼ばれている場合もあります。

(2) 事前評価書(判定調査書)

 この様式は、指針にはありませんが、本人や家族をはじめとする介護者・支援者がコミュニケーションに問題を抱えていて、それを解決する手段として、意思伝達装置が必要であることを確認するとともに、そのために本人の身体機能、コミュニケーション能力、家族をはじめとする介護者・支援者の状況(支援環境)、意思伝達装置の必要性(どのような場面で、どのような内容を伝えたいのか、本人のニーズおよび家族のニーズ)を確認することになります。

 そのため、意思伝達装置のための様式が必要になるといえます。(1)の「基礎調査書」に対して「判定調査書」と呼ばれている場合もあります。

 必須ではありませんが、これも身更相が行う判定の補助資料になりうるものです。
 書類判定の場合には必要不可欠で、申請者本人が実際に意思伝達装置を使えるか否かの重要な判断材料になると考えられます。

 実際に申請されるケースの中には、真に意思伝達装置を必要としている場合だけではなく、「単に意思伝達装置の支給対象となりうるから申請してみる。」という、実用性や必要性が低い申請もあるかもしれません。これらのケースでは、障害状況も操作状況も機能的には満たしていて、判定には通ってしまうことが多いと考えられます。

 しかし、真にコミュニケーション手段として必要としていなければ、実際の生活の中では有効活用されない場合があると考えられます。とくに、「対象者の意欲と必要性」、「使用環境と周囲の状況」が良好であるかどうかといった社会的所見は、市町村の事前評価にて調査すべきことで、保健師などとの協力も有効であるといえます。

【参考:評価のポイント】

共通項目
個人プロフィール
住所、氏名、年齢、生年月日 など
障害程度
身体障害者手帳の有無、障害程度等級、障害者総合支援法施行令に規定する疾病に該当・非該当、療育手帳の有無、等級、原疾患名、障害名、告知の有無 など
介護状況・支援状況
在宅か施設入所中か入院中か、家族構成、主たる介護者、介護保険要介護認定の有無、区分、ヘルパー・訪問看護等の利用 など
意思伝達装置において必要な項目
意思伝達装置の適応条件の有無(身体的機能評価)・・・3.1(3)の所見書にも関係
同じ疾患・障害でも疾病のタイプによって障害のタイプはさまざまであるが、どうか
(例えば、同じALSでも上肢型、下肢型、球麻痺型と大別でき、また同じ型でも進行には差がある)
身体機能的に機器操作が可能かどうか、音声・言語機能はどうか
視覚・聴覚・知的能力はどうか
コミュニケーション能力
現在どのようにコミュニケーションをとっているのか(音声、文字盤、機器利用、視線 等)
ALSの場合、緊急の用事は、文字盤(サインボード)などで、細かいことは、透明文字盤を使っている等。
どのような場面で困っているのか
呼び鈴(呼びベル、ブザー、コール)の利用はあるか
機器導入にあたってのサポート
主治医は誰か、かかりつけの病院はどこか
機器に詳しい人のサポートが常時受けられるか

 不必要な情報収集は好ましくありませんが、正確な判定を行うためには、それぞれの項目についてより正確で詳細な情報がある方が有用といえます。

 本人のコミュニケーション意欲と、家族等の周囲の人々のサポートはスムースな機器導入には欠かせません。周囲の意見だけでなく、何らかの形で、本人の意思確認を行う手だてを講じることも必要です。

機器の試用についての確認

 訪問以外の方法で調査を行う場合には、実際に機器の操作の様子を見ることはできません。
 デモ機の貸し出しを受けて、実際に操作が可能であることを本人や家族が確かめている事実があれば最も確実です。しかし現状では、貸し出しシステムはほとんどないので、身体の動きや、入力装置の操作方法をできるだけ具体的に聞きとり、可能であれば写真やビデオで確認するのがよいでしょう。

 なお、適合を業者に全て委ねてしまうことは望ましいことではなく、業者としても、サービスとして出来る範囲を決めた上で行政側と打ち合わせておくなど、適切に対応すべきです。

 ただし、3.1(3)の所見書が適切に作成されている場合や、新規の支給ではなく、一度支給を受けていて修理や再度支給を受ける場合には、本人の身体機能に合った機器であることが予め分っているので、試用の必要はないと考えます。

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