HOME の中の (>) ガイドライン の中の (>) 3.重度障害者用意思伝達装置の意見書・処方箋・調査書等 - 3.1 意見書・処方箋に必要な内容
3.重度障害者用意思伝達装置の意見書・処方箋・調査書等
意思伝達装置は、原則的には直接判定されるべき補装具であると考えます。
しかしながら地域や個別事情によっては、直接判定の実施が困難なために書類判定もやむを得ない場合もあると思われるため、以下のような書式を整備することで、医学的所見および社会的所見から、判定に必要な項目の確認が漏れることのないように、書類判定を適切に行うことが必要です。
意見書・処方箋・調査書等の書類に、どのような項目について記載されている必要があるのかは、実際の判定においてどのような判断材料になるのかを理解することにより、明確になるといえます。
これらの書類判定に必要な書類の中には、指針にて様式例が示されているものもありますが、各市町村あるいは身更相で独自に作成しているところもあります。各様式は、必要な項目が含まれていれば、補装具共通の様式と意思伝達装置用に定めた様式を併用しても、あるいは意思伝達装置専用に定めた様式を利用しても構いません。
- 様式例は、「3.3.重度障害者用意思伝達装置の処方箋等(例)」をご覧下さい。
直接判定であればその場で確認できることであっても、書類判定であれば書類に記載欄を設けていなければ不明になることもあり、これは市町村のケースワーカーや保健師などが確認しておくべき内容といえます。
3.1 意見書・処方箋に必要な内容
補装具意見書・処方箋については、医師が「医学的所見」からの判断に基づき作成するものですが、理学療法士・作業療法士等の意見(所見)を踏まえて作成することも可能です。
ここでは、書類判定に必要になると考えられる書類と、その内容をまとめてみます。直接判定の際には、これらの様式は必須ではありませんが、適合判定の際のチェックシートとして利用することも可能です。
(1) 意見書【一部改定】
意見書の様式例として公的なものとしては、指針における別添様式例第6号があります。他の補装具と共通でも、意思伝達装置専用でも構いませんが、支給には「意思伝達装置が必要と認める」旨の記載があることが必要であり、さらに具体的な医学的評価・所見が必要です。意見書を作成する医師は、指針における別表2にて
- ① 身体障害者福祉法第15条第1項に基づく指定医(日本専門医機構が認定した専門医又は所属学会認定の専門医)
- ② 指定自立支援医療機関の医師(日本専門医機構が認定した専門医又は所属学会認定の専門医)
- ③ 国立障害者リハビリテーションセンター学院で行う補装具関係の適合判定医師研修会を修了している医師
- ④ 上記と同等と認める医師(※補装具費支給意見書のみで市町村が判断する種目に限る)
- ⑤ 保健所の医師
- ⑥ 難病法第6条第1項に基づく指定医
の専門医が記入(署名または記名、押印)することが必須となります。
なお、⑤は身体障害児(難病患者等を含む)、⑥は難病患者等に限られます。
<補装具費支給事務取扱指針>
2 補装具費支給に係る事務処理について
(1) 支給の申請及び判定
③ 難病患者等の補装具費支給
原則、身体障害者・児の手続に準ずるものとするが、補装具費の支給申請を受け付けるにあたり、特殊の疾病告示に掲げる疾病に該当するか否かについては、医師の診断書等の提出により確認するものとする。なお、特定疾患医療受給者証等により疾病名が確認できる場合には、医師の診断書の提出を求めないことができること。
なお、難病患者等に係る補装具費支給意見書は、別表2の①~⑥までに 掲げる医師が作成したものであること。
公正で、適切な書類判定のためには、「意見書」の書類が適切に作成されることが必要と考えられます。意思伝達装置用の意見書様式を作成する場合には、医学的評価や処方内容が記載しやすいように工夫することも有効です。
例えば、
- 指針における別添様式例第6号の「障害の状況」欄に、記載が必要な項目を明示する
- 指針における別添様式例第6号の「処方」欄に、(2)処方箋の内容を予め設ける
などが考えられます。本ガイドラインにて、様式(例)を提案します。
【参考:意見書作成医師への情報提供】
自治体(身更相)によっては、全件直接判定を行うことから、意見書(処方)を要求していないところもありますが、ほとんどの自治体(身更相)において意見書が求められています。しかし意見書を作成する医師においては、その作成経験が少ないことから、不備のある意見書が提出されることもあります。
意見書において身体状況や処方内容の必要事項の記載漏れ、身体状況と処方内容の不一致(不適合)などがあると、差し戻しや確認などが必要となり、支給決定までの期間が長くなってしまいます。意見書に求められる内容が身更相で異なるほか、独自の様式を定めている場合もあると思いますが、意見書を作成する医師に対して、自治体(身更相)の判定において必要な内容を十分に周知しておくことが大切です。
(2) 処方箋
様式は、指針の別添様式例第5号に準ずるものが必要と考えられますが、意思伝達装置用のものは示されていません。本ガイドラインにて、様式(例)を提案します。
意見書に付属するものであり、医師が直接作成する場合と、医師の指示の下に理学療法士・作業療法士等が作成する場合があると考えられます。内容としては、どのような意思伝達装置とスイッチ等の付属品が必要か、明記することが必要です。
処方内容としては、補装具購入基準および修理基準に則り、適切な種別を指示する必要があります。具体的な機種やスイッチを選択する必要があるため、適切な適合判定が行われていることが大切になります。
直接判定であればその場で試行できる場合がありますが、書類判定の場合には、処方箋に記載された内容がそのまま購入されることになりますので、十分な検討が必要です。
- スイッチ等の特徴は、「A.3 重度障害者用意思伝達装置の購入基準・修理基準等」をご覧下さい。
なお、身更相は、補装具費の支給判定を行うだけではありません。制度利用ができない場合でも処方を行うことになっています。自費購入の場合や、地域の支援体制の状況によっては、事前相談等でも処方することがあるかと思いますが、その場合でも、この処方箋は利用できるものと考えます。
<補装具費支給事務取扱指針>
3 都道府県等の役割について
(2)更生相談所
(中略)
なお、身体障害者・児が自費で補装具を入手しようとする場合(本人又は世帯員のうち市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合を含む。)についても、適切な補装具を入手することができるよう、身体障害者福祉法第10条に定める補装具の処方及び適合判定を行うこと。
(3) 所見書(適合評価書)
この様式は、指針にはありませんが、医師が(1)の意見書を作成(総合的に判断)する上で、(2)の処方箋を作成する医師・理学療法士・作業療法士等が、対象者の身体状況や適合評価状況などについての所見をまとめる補助的な書類であると考えると良いでしょう。本ガイドラインにて、様式(例)を提案します。
必須ではありませんが、これも身更相の判定資料の補助資料になりうるものです。
書類判定の場合には、申請者本人が実際に意思伝達装置を使えるか否かの、重要な判断材料になると考えます。