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A.3 重度障害者用意思伝達装置の購入基準・修理基準等
指針にある、意思伝達装置の購入基準や修理基準は以下の通りになっています。
<購入基準>
種目 | 名称 | 基本構造 | 付属品 | 価格 | 耐用年数 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
重度障害者用意思伝達装置 | 文字等走査入力方式 | 意思伝達機能を有するソフトウェアが組み込まれた専用機器であること。文字盤又はシンボル等の選択による意思の表示等の機能を有する簡易なもの。 | プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
152,700 | 5 | プリンタを必要としない場合は、15,000円減じた価格とする。 ひらがな等の文字綴り選択による文章の表示や発声、要求項目やシンボル等の選択による伝言の表示や発声等を行うソフトウェアが組み込まれた専用機器及びプリンタ(必要に応じて)として構成されたものにより構成されたものであること。その他、障害に応じた付属品を修理基準の中から加えて加算することができること。 |
|
簡易な環境制御機能が付加されたもの | プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
203,900 | 簡易な環境制御機能が付加されたものとは、1つの機器操作に関する要求項目を、インタフェースを通して機器に送信することで、当該機器を自ら操作することができるソフトウェアをハードウェアに組み込んでいるものであること。 | ||||
高度な環境制御機能が付加されたもの | 遠隔制御装置 プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
480,600 | 高度な環境制御機能が付加されたものとは、複数の機器操作に関する要求項目を、インタフェースを通して機器に送信することで、当該機器を自ら操作することができるソフトウェアをハードウェアに組み込んでいるものであること。 | ||||
通信機能が付加されたもの | プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
通信機能が付加されたものとは、文章表示欄が多く、定型句、各種設定等の機能が豊富な特徴を持ち、生成した伝言を、メール等を用いて、遠隔地の相手に対して伝達することができる専用ソフトウェアをハードウェアに組み込んでいるものであること。 | |||||
生体現象方式 | 生体信号の検出装置及び解析装置 | 身体の障害の状況により、付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 | 480,600 | 生体現象方式とは、生体現象(脳波や脳の血液量等)を利用して「はい・いいえ」を判定するものであること。 |
<借受け基準>
種目 | 名称 | 基本構造 | 付属品 | 価格 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
重度障害者用意思伝達装置 | 文字等走査入力方式 | 意思伝達機能を有するソフトウェアが組み込まれた専用機器であること。文字盤又はシンボル等の選択による意思の表示等の機能を有する簡易なもの | プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
3,800 | プリンタを必要としない場合は、370円減じた価格とする。 ひらがな等の文字綴り選択による文章の表示や発声、要求項目やシンボル等の選択による伝言の表示や発声等を行うソフトウェアが組み込まれた専用機器及びプリンタ(必要に応じて)として構成されたものにより構成されたものであること。 |
|
簡易な環境制御機能が付加されたもの | プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
5,050 | 簡易な環境制御機能が付加されたものとは、1つの機器操作に関する要求項目を、インタフェースを通して機器に送信することで、当該機器を自ら操作することができるソフトウェアをハードウェアに組み込んでいるものであること。 | |||
高度な環境制御機能が付加されたもの | 遠隔制御装置 プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
11,250 | 高度な環境制御機能が付加されたものとは、複数の機器操作に関する要求項目を、インタフェースを通して機器に送信することで、当該機器を自ら操作することができるソフトウェアをハードウェアに組み込んでいるものであること。 | |||
通信機能が付加されたもの | プリンタ(必要に応じて) 身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 |
通信機能が付加されたものとは、文章表示欄が多く、定型句、各種設定等の機能が豊富な特徴を持ち、生成した伝言を、メール等を用いて、遠隔地の相手に対して伝達することができる専用ソフトウェアをハードウェアに組み込んでいるものであること。 | ||||
生体現象方式 | 生体信号の検出装置及び解析装置 | 身体の障害の状況により、付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。 | 12,000 | 生体現象方式とは、生体現象(脳波や脳の血液量等)を利用して「はい・いいえ」を判定するものであること。 |
【参考:借受け想定されるケースの例(仮想事例)】
①病状の進行により装置の見直しを伴う支給
項目 | 内容 |
---|---|
障害状況等 | 【指針(別表)】音声・言語機能障害及び神経・筋疾患 ≪具体的状態≫ 実用的な音声による意思疎通が困難であり、かつ 神経筋疾患による両上下肢障害のため手指の可動域・押下力が制限され、一般的なキーボード等による機器操作が困難である者 |
性別・年齢 | (特に想定しない) |
原因疾患名 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
製品種目 | 重度障害者用意思伝達装置(文字等走査入力方式) 重度障害者用意思伝達装置(生体現象方式) |
借受けの場合 | 障害の進行への対応 |
ケースの概要 | 対象者は、ALSの進行により、四肢の運動機能が低下し僅かな手指の随意運動が確認できる程度である。また、呼吸も弱くかすかな発声は可能であるが、慣れた家族・介護者でないと聞き取りが困難な場合が増え、重度障害者用意思伝達装置の適用対象者になった。 しかし、購入費を支給した際の機種構成のままでは、長期間にわたる継続利用が見込めず、入力装置のみならず本体の変更が必要になることも想定されることが、医師意見書等で確認された。 そのため、購入ではなく借受けを適とする判定となった。 |
借受け利用の有用性 | ・重度障害者用意思伝達装置(文字等走査入力方式)の利用が困難になった場合、重度障害者用意思伝達装置(生体現象方式)への変更が可能である。 ・借受け期間の更新(再申請)において、入力装置(スイッチ)の適合評価が再度実施されるため、入力装置(スイッチ)交換が必要な場合が、確認されやすい。 |
特記事項 | ・借受け期間を最長1年とする。1年後に継続して利用が見込める場合には、再び借受けの申請を行うものとする。(借受け中の装置を、そのまま利用でき、さらに1年を超えての継続利用がみこまれる場合には、購入申請することも可とする。) ・再判定にあたっては、使用実績に加え、入力装置の適合について評価を行うこと。入力装置の不適合がみられる場合には、再借受け期間の間の状態を想定した入力装置交換(修理対応)を合わせて行うこと。 ・文字等走査入力方式から、生体現象方式等への装置変更は判定の上での決定となる。(その反対は機器の構成上、逆行案件となるので認められない。)なお、病状の進行状況によっては、生体現象方式の習熟のために、一定期間の併用を認めることも可とする。(長期にわたり併用することを想定している場合には、2個支給に該当する場合があるので、留意すること。) |
適・不適の判断には、実際の事例において、身体状況や生活環境等を十分に検討し、判断して下さい。
②ALS患者に対する早期支給
項目 | 内容 |
---|---|
障害状況等 | 【指針(別表)】音声・言語機能障害及び神経・筋疾患 ≪具体的状態≫ 実用的な音声による意思疎通が困難であり、かつ 神経・筋疾患による両上下肢障害のため手指の可動域・押下力が制限され、一般的なキーボード等による機器操作が困難である者 【平成25年2月12日自治体担当者会議資料(P97)】 筋萎縮性側索硬化症等の進行性疾患においては、急速な進行により支給要件を満たすことが確実と診断された場合は、早期支給を行うように配慮する必要がある。 ≪具体的状態≫ まだ、前項の要件に達していないが、医師意見書により病状の進行により1年以内に要件を満たすことが想定され、事前評価等から、それまでに重度障害者用意思伝達装置の操作による意思疎通手段の確立が必要かつ見込まれる者 |
性別・年齢 | (特に想定しない) |
原因疾患名 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
製品種目 | 重度障害者用意思伝達装置(文字等走査入力方式) |
借受けの場合 | 障害の進行への対応、仮合わせ前の試用 |
ケースの概要 | 対象者は、ALSの告知後約2年が経過し、四肢の運動機能や呼吸機能の低下が顕著になるが、まだ、代替マウス等でPCの利用も可能であり、かすかな発声も可能である。 しかし、今後気管切開を予定していることや、病状の進行が早くPC操作も困難になると予測されることが、医師意見書等で確認された。 そのため、利用環境構築を目的として、早期支給としての借受けを適とする判定となった。 |
借受け利用の有用性 | ・他の手段での意思疎通が不可能になる前に重度障害者用意思伝達装置を利用できるようにすることで、意思表出が不可能となく期間を生じないように備えることができる。 ・急速な進行で、長期間にわたり重度障害者用意思伝達装置(文字等走査入力方式)の利用が見込めないことが危惧される場合にも、早期支給により利用期間を長くすることとなり、効果的な支給となる。 ・患者にあたっては、想定できる利用期間が短いことで購入申請をためらうことが危惧されるが、借受けであれば申請をためらうことが軽減される。 |
特記事項 | ・早期支給を行う配慮は、操作方法の習得および生活環境との適合が目的であり、申請にあっては複数の機種を比較する目的ではないことに留意すること。 ・借受け期間を最長1年とする。借受け期間の終了前には、早期支給対象でない通常の支給対象として、「病状の進行により装置の見直しを伴う支給」とし、借受けまたは購入の申請を行い、判定をうけること。 |
適・不適の判断には、実際の事例において、身体状況や生活環境等を十分に検討し、判断して下さい。
③幼小児における言語獲得状況に応じた装置の見直しを伴う支給
項目 | 内容 |
---|---|
障害状況等 | 【指針(別表)】音声・言語機能障害及び神経・筋疾患 ≪具体的状態≫ 実用的な音声による意思疎通が困難であり、かつ 神経・筋疾患による両上下肢障害のため手指の可動域・押下力が制限され、一般的なキーボード等による機器操作が困難である児 |
性別・年齢 | 4歳・女性 |
原因疾患名 | 脊髄性筋萎縮症(SMA)・Ⅰ型 |
製品種目 | 重度障害者用意思伝達装置(文字等走査入力方式) ・簡易なもの または 簡易な環境制御機能が付加されたもの ・通信機能を有するもの |
借受けの場合 | 障害の進行への対応、成長への対応 (「運動機能は低下するが言語の獲得によりスキルが向上する場合があることに留意する」に該当) |
ケースの概要 | 対象者は、生後間もなく確定診断を受け、1歳までに気管切開を行い、人工呼吸器を装着している。現在は、かすかな発声は可能であるが、慣れた家族・介護者でないと聞き取りが困難である。また、手指をはじめとする四肢運動機能の発達も遅く筆記は困難である。日常生活において呼びかけを正しく理解し、返答できるが、長文を用いる意思表出が大変であり、重度障害者用意思伝達装置の適用対象者になった。 加えて、療育により言語獲得を行いその発達段階であることから、現状のコミュニケーション能力が数年の間に向上することが見込まれ、適用機種の変更が必要になることが想定されるため、借受けを適とする判定となった。 |
借受け利用の有用性 | ・当初は、簡易な機種を用いることで、学齢およびその前における言語獲得期において、定型句やシンボルの併用から50音を確実に修得できる。 ・その後に漢字を含む文字選択や、通信機能を備える装置を使うことで、言語発達及び生活環境の変化に対応する機種への変更が可能になる |
特記事項 | ・コミュニケーション能力は、「コミュニケーション発達に関する里程標」、「KIDS 乳幼児発達スケール」、「LCSA 学齢版 言語・コミュニケーション発達スケール」等を用いて客観的に判断すること。 ・小児期(就学)に合わせて、漢字の利用が見込まれ、漢字変換が可能な装置への変更を想定していること。なお、変更にあたっては操作方法の習得のために、一定期間(短期間)の併用を認めることも可とする(長期にわたり併用することを想定している場合には、2個支給に該当する場合があるので、留意すること。) ・教育目的として、学校側からの希望ではなく、本人・保護者の希望により生活場面での利用を希望していること。 |
適・不適の判断には、実際の事例において、身体状況や生活環境等を十分に検討し、判断して下さい。
<修理基準>
種目 | 形式 | 修理部位 | 価格 | 備考 |
---|---|---|---|---|
重度障害者用意思伝達装置 | 本体修理 | 53,400 | ||
固定台(アーム式またはテーブル置き式)交換 | 32,000 | |||
固定台(自立スタンド式)交換 | 62,000 | |||
入力装置固定具交換 | 32,000 | |||
呼び鈴交換 | 21,300 | |||
呼び鈴分岐装置交換 | 35,800 | |||
接点式入力装置(スイッチ)交換 | 10,600 | |||
帯電式入力装置(スイッチ)交換 | 42,700 | 触れる操作で信号入力が可能なタッチセンサーコントローラーであること。別途必要なタッチ式入力装置は10,600円、ピンタッチ式先端部は13,000円増しとすること。 | ||
筋電式入力装置(スイッチ)交換 | 85,400 | |||
光電式入力装置(スイッチ)交換 | 53,400 | |||
呼気式(吸気式)入力装置(スイッチ)交換 | 37,300 | |||
圧電素子式入力装置(スイッチ)交換 | 42,700 | |||
空気圧式入力装置(スイッチ)交換 | 42,700 | 感度調整可能なセンサーを使用するものに限る。 | ||
視線検出式式入力装置(スイッチ)交換 | 220,000 | |||
遠隔制御装置交換 | 36,000 |
【参考:修理基準の解説】
重度障害者用意思伝達装置の修理基準には、7種類の異なる入力装置(スイッチ)と、本体及びスイッチの付属品が定められています。それぞれの項目について簡単に説明します。
スイッチは利用者の身体機能に合わせて選ぶことができます。また、特に進行性の疾患の場合、身体機能の変化に合わせて、その時々にもっとも使いやすいものに換えていくことが可能です。同じスイッチでも,色々な身体部位で操作することが可能です。
- 具体的な使用例は、「操作スイッチの適合事例(別冊、ホームページ)」をご覧下さい。
(1)接点式入力装置
接点式は、押しボタンスイッチのように、荷重をかけて機械的な接点を閉じる操作をする入力装置で、種類も形状も豊富に市販されています。操作が分りやすく、クリック音やクリック感などの操作感があるので入力したことを確認できます(図1)。
手だけでなく足や頬など色々な身体部位で操作することができます。小さな力、小さな動きで操作できるものもありますが、意図しない誤入力も入りやすく、スイッチの反発力が少ないため、押しっぱなしになることがあるので注意します。
一般的に進行性の神経筋疾患等ではその初期段階に用いられます。
最も多く使われている種類の入力装置です。
図1 接点式入力装置
(2)帯電式入力装置
帯電式は、一部のエレベータのスイッチにも使われている、いわゆるタッチセンサです。身体の静電気に反応する(静電容量の変化を検知する)入力装置なので、荷重をかける必要がなく、操作部位に力がなくても操作できます(図2)。
神経筋疾患等のかなり進行した段階でも使用可能です。ただし、触った感覚だけでクリック感がないので、正しく操作していることを確認するため、表示ランプ、音や画面で操作している本人に知らせる(フィードバックする)必要があります。
図2 帯電式入力装置
(3)筋電式入力装置
筋電式は腕やあごなどの大きな筋肉が収縮するときに発生する筋電(EMG)の強弱を、皮膚表面に貼り付けた電極で検知する入力装置です(図3)。
あごをかみ締める、肩に力を入れるなど、必ずしも巧緻性の高い動作は必要ないことが長所です。
しかし、有線のセンサを身体に装着することが必要なので、鬱陶しさや煩わしさ、ベッドや車いすに引っかかって断線する、線が動くと雑音が入るので誤動作する、などのリスクがあります。電極の貼り付け部分のかぶれにも注意が必要です。
図3 筋電式入力装置
(4)光電式入力装置
光電式は、対象物に光を当てて、その反射の強さを検知する入力装置です。スイッチにタッチしなくても設定した距離まで近づけば反応するので、額やまぶたなど、接触が煩わしい操作部位でも使用できます(図4)。
感度が高く、操作部位のわずかな動きを検知することができます。ただし、接触の感覚がないので、操作感もありません。
(2)の帯電式と同様のフィードバックが必要です。また、目の周りで使用する際には、直接光が目に入ると眩しいので、設置位置に注意します。
図4 光電式入力装置
(5)呼気式(吸気式)入力装置
呼気(吸気)式は、主に高位の頸髄損傷者がよく使用する、チューブやストローを通して呼気圧(吸気圧)を検知する入力装置で、同じスイッチで「吹く」と「吸う」の2つの入力まで可能です(図5)。
操作がわかりやすく、圧をかけることによって自分の口元にも圧がかかり、操作感として伝わります。先端のチューブやストローを一度離しても、くわえ直せるように設置位置を調整します。
チューブにたまる唾液や水滴は、放置すると不衛生で、かつ入力装置の寿命を縮めることになるので、定期的な洗浄と乾燥が必要です。
図5 呼気式(吸気式)入力装置
(6)圧電素子式入力装置
圧電素子式は、身体の動きによってピエゾ素子と呼ばれる薄板がたわみ、発生した電圧を検知する装置です。わずかな力でもたわみが生じるため、操作部位のわずかな動きを捉えることができます(図6)。
手、足、顔など様々な部位で使用できますが、有線のセンサを身体に貼り付けるため、筋電式と同様の注意が必要です。
この入力装置は、ピエゾ素子がたわんだ瞬間のみスイッチが入るので、(11)で後述する呼び鈴分岐装置の動作に必要な長押しができないので、設定時間内に決められた回数の短い入力を行うなど他の方法が必要です。
図6 圧電式素子入力装置
(7)空気圧式入力装置
空気圧式は、エアバッグを身体の様々な部位で押すことによって、その空気圧の変化を検知する装置です。エアバッグを押す強さは感度調整で変えられるので、 手、足、頭などの動きの大きさに合わせることができます。
また、柔らかい素材のエアバッグであれば、操作部位に合わせて形が変わるので、置くだけで簡易に設置できます(図7)。さらに、入力装置を設置したときに、エアバッグに予めかかっている身体の操作部位の重さは、自動的にキャンセルされます。
エアバッグを押して 空気圧の変化が起きた瞬間だけスイッチが入るので、前述の(6)圧電素子式入力装置と同様に、長押しの入力には対応できません。
図7 空気圧式入力装置
(8)視線検出式入力装置
視線検出式は、視線の動きをカメラ(センサ)で捉え、信号処理によって出力を得る装置です(図8)。設置にあたっては、身体と直接接触することのないものですが、頭部(目)とセンサの位置関係を特定するキャリブレーションが必要です。頸部を動かして頭部の、あるいはセンサの位置を変えると再度の調整が必要な物もあります。画面上の文字盤を見つめて、その文字を選択入力する方式は、走査(スキャン)方向も視線で制御し、該当する文字を見つめることで決定する方式と解釈されます。しかし、眼球の可動域が十分に確保されなくなると、文字盤の端の方を見つめることができなくなり、文字入力(選択)ができなくなることもあります。
図 視線検出式入力装置
(イラスト提供:(公財)テクノエイド協会)
(9)固定台(アーム式、テーブル置き式、自立スタンド式)
固定台は、意思伝達装置の本体(画面)を使用場所に、本人が見やすいように固定するための台です。車いす上で使用する場合には、画面の高さを目の高さに合わせ、ベッド上での使用では、ベッドの高さや角度に合わせて、画面を傾斜させて支える必要があります。
テーブル置き式は主にノートパソコンをベースにした意思伝達装置を一定の画面角度に固定する台です(図9-1)。
構造が簡単で取り扱いやすい反面、アーム式に比べて固定位置の自由度が少ない特徴があります。一方、アーム式はオーバーテーブルやサイドレールにクランプで締め付けたアームに意思伝達装置の本体を固定します(図9-2)。
体位交換で身体の向きが変わる場合はアーム式の方が画面を見やすい位置に固定できます。自立式でキャスター移動が可能なスタンド型の固定台もあります(図9-3)。クランプなどの固定部分は徐々に緩んでくるので、時々締めなおさないと位置がずれてきます。
図9-1 固定台(テーブル置き式)
図9-2 固定台(アーム式)
図9-3 固定台(自立スタンド式)
(10)入力装置固定具
入力装置固定具は、入力装置を本人の操作しやすい位置に固定するための道具です。(9)のアーム式固定台のように、車いすやベッド周りに固定して、入力装置の位置を手・足・頭などの操作部位の近くに固定できます(図10)。
ノブボルトを回してアームの位置を固定するものや、蛇腹を曲げて位置決めするものなどがあります。入力装置は固定具の先端にねじ止めするか、両面テープや面ファスナー(ベルクロ、マジックテープ等)で固定します。クランプやノブボルトは(9)と同様に時々締めなおす必要があります。
図10 入力装置固定具
(11)呼び鈴
筋電式は腕やあごなどの大きな筋肉が収縮するときに発生する筋電(EMG)の強弱を、皮膚表面に貼り付けた電極で検知する入力装置です(図3)。
あごをかみ締める、肩に力を入れるなど、必ずしも巧緻性の高い動作は必要ないことが長所です。
しかし、有線のセンサを身体に装着することが必要なので、鬱陶しさや煩わしさ、ベッドや車いすに引っかかって断線する、線が動くと雑音が入るので誤動作する、などのリスクがあります。電極の貼り付け部分のかぶれにも注意が必要です。
図3 筋電式入力装置
光電式は、対象物に光を当てて、その反射の強さを検知する入力装置です。スイッチにタッチしなくても設定した距離まで近づけば反応するので、額やまぶたなど、接触が煩わしい操作部位でも使用できます(図4)。
感度が高く、操作部位のわずかな動きを検知することができます。ただし、接触の感覚がないので、操作感もありません。
(2)の帯電式と同様のフィードバックが必要です。また、目の周りで使用する際には、直接光が目に入ると眩しいので、設置位置に注意します。
図4 光電式入力装置
呼気(吸気)式は、主に高位の頸髄損傷者がよく使用する、チューブやストローを通して呼気圧(吸気圧)を検知する入力装置で、同じスイッチで「吹く」と「吸う」の2つの入力まで可能です(図5)。
操作がわかりやすく、圧をかけることによって自分の口元にも圧がかかり、操作感として伝わります。先端のチューブやストローを一度離しても、くわえ直せるように設置位置を調整します。
チューブにたまる唾液や水滴は、放置すると不衛生で、かつ入力装置の寿命を縮めることになるので、定期的な洗浄と乾燥が必要です。
図5 呼気式(吸気式)入力装置
圧電素子式は、身体の動きによってピエゾ素子と呼ばれる薄板がたわみ、発生した電圧を検知する装置です。わずかな力でもたわみが生じるため、操作部位のわずかな動きを捉えることができます(図6)。
手、足、顔など様々な部位で使用できますが、有線のセンサを身体に貼り付けるため、筋電式と同様の注意が必要です。
この入力装置は、ピエゾ素子がたわんだ瞬間のみスイッチが入るので、(11)で後述する呼び鈴分岐装置の動作に必要な長押しができないので、設定時間内に決められた回数の短い入力を行うなど他の方法が必要です。
図6 圧電式素子入力装置
空気圧式は、エアバッグを身体の様々な部位で押すことによって、その空気圧の変化を検知する装置です。エアバッグを押す強さは感度調整で変えられるので、 手、足、頭などの動きの大きさに合わせることができます。
また、柔らかい素材のエアバッグであれば、操作部位に合わせて形が変わるので、置くだけで簡易に設置できます(図7)。さらに、入力装置を設置したときに、エアバッグに予めかかっている身体の操作部位の重さは、自動的にキャンセルされます。
エアバッグを押して 空気圧の変化が起きた瞬間だけスイッチが入るので、前述の(6)圧電素子式入力装置と同様に、長押しの入力には対応できません。
図7 空気圧式入力装置
視線検出式は、視線の動きをカメラ(センサ)で捉え、信号処理によって出力を得る装置です(図8)。設置にあたっては、身体と直接接触することのないものですが、頭部(目)とセンサの位置関係を特定するキャリブレーションが必要です。頸部を動かして頭部の、あるいはセンサの位置を変えると再度の調整が必要な物もあります。画面上の文字盤を見つめて、その文字を選択入力する方式は、走査(スキャン)方向も視線で制御し、該当する文字を見つめることで決定する方式と解釈されます。しかし、眼球の可動域が十分に確保されなくなると、文字盤の端の方を見つめることができなくなり、文字入力(選択)ができなくなることもあります。
図 視線検出式入力装置
(イラスト提供:(公財)テクノエイド協会)固定台は、意思伝達装置の本体(画面)を使用場所に、本人が見やすいように固定するための台です。車いす上で使用する場合には、画面の高さを目の高さに合わせ、ベッド上での使用では、ベッドの高さや角度に合わせて、画面を傾斜させて支える必要があります。
テーブル置き式は主にノートパソコンをベースにした意思伝達装置を一定の画面角度に固定する台です(図9-1)。
構造が簡単で取り扱いやすい反面、アーム式に比べて固定位置の自由度が少ない特徴があります。一方、アーム式はオーバーテーブルやサイドレールにクランプで締め付けたアームに意思伝達装置の本体を固定します(図9-2)。
体位交換で身体の向きが変わる場合はアーム式の方が画面を見やすい位置に固定できます。自立式でキャスター移動が可能なスタンド型の固定台もあります(図9-3)。クランプなどの固定部分は徐々に緩んでくるので、時々締めなおさないと位置がずれてきます。
図9-1 固定台(テーブル置き式)
図9-2 固定台(アーム式)
図9-3 固定台(自立スタンド式)
入力装置固定具は、入力装置を本人の操作しやすい位置に固定するための道具です。(9)のアーム式固定台のように、車いすやベッド周りに固定して、入力装置の位置を手・足・頭などの操作部位の近くに固定できます(図10)。
ノブボルトを回してアームの位置を固定するものや、蛇腹を曲げて位置決めするものなどがあります。入力装置は固定具の先端にねじ止めするか、両面テープや面ファスナー(ベルクロ、マジックテープ等)で固定します。クランプやノブボルトは(9)と同様に時々締めなおす必要があります。
図10 入力装置固定具
呼び鈴は、病院病棟のナースコールのようなもので、家庭や施設で人を呼ぶためのベルです。同じ部屋にいても、意思伝達装置を使う方は、声を出して人を呼べないため、コミュニケーションをはじめる前に、相手の注意を引きつける必要があります。また、離れたところにいる家族や介護スタッフを呼ぶときにも呼び鈴が必要になります(図11)。
呼び鈴には有線・無線、電池式・充電池式・AC電源式などの種類があります。一般に無線で、充電池式のものは設置場所を選ばないなどの点で使い勝手が優れています。ただし、無線は、建物の構造によって電波が届きにくく、うまく動作しない場合があるので注意が必要です。
図11 呼び鈴
(12)呼び鈴分岐装置
呼び鈴分岐装置は、意思伝達装置を操作する入力装置で呼び鈴も操作できるようにするための切替装置です。入力装置を通常よりかなり長く押す、あるいは短い時間に何回も入力すると意思伝達装置から呼び鈴に操作が切り替わります(図12)。
入力装置の種類によっては、連続した長い入力が得られないもの(例えば(6)の圧電素子式入力装置、(7)の空気圧式入力装置)があるので注意します。その場合は、本人の身体機能的に可能であれば、設定時間内に決められた回数の短い入力を行って操作します。
図12 呼び鈴分岐装置
(13)遠隔制御装置
遠隔制御装置は、いわゆるリモコン発信器で、赤外線や無線により、他の機器を操作するための装置です。現在の商品で一般的なものは、赤外線方式であるので、リモコンと操作する機器との間に障害物があって赤外線を遮らないように設置する必要があります。操作する機器によって発信する信号が異なるため、その場で登録する「学習リモコン」や、あらかじめ登録されている機種ごとの設定を呼び出す「プリセットリモコン」などがあります。