Vol.32/ No.2 (通巻106号)

災害時の環境整備 日常生活を取り戻すための技術

表紙データ(PDFファイル)

32-2号のご案内をさせて頂きます。連休合間の発送になり、お手元に届く日に差が生じるかもしれません。奇しくも、東日本大震災も熊本地震でも、この新緑の時期に、被災者・支援者の方々は、生活再建に懸命に向き合われておられ、現在も続いています。そうした暮らしに思いを寄せ、じっくりと読み進めていきたい特集です。

「特集にあたって」 野口 祐子
「高齢の人や障害のある人が、災害時の厳しい条件の中で、1 日も早く日常生活を取り戻し、平時と同じように心身の状態を維持して暮らすために、リハビリテーション工学に携わる私たちに何ができるのか、問題をどう改善し、備えていけば良いのかを考えたいと思い、特集のテーマを「災害時の環境整備 日常生活を取り戻すための技術」とした。」

「熊本地震から学ぶ −災害被災から日常生活を取り戻すために−」 平野 みどり
「障害者には福祉避難所」をという一律的な対応ではなく、むしろできるだけ一般の避難所に多様な人を受け入れる「インクルーシブな機能を持たせること」が重要である」

「避難所の景色を変える ー熊本地震の報告ー」 水谷 嘉浩
「防災協定は、災害発生後に行政から支援要請を受けて段ボール会社が速やかに必要数の段ボールベッドを届けるための仕組みである」

「障がいのある人にとっての仮設住宅・みなし仮設住宅の課題」 阪東 美智子
「地震では…バリアフリー化が不徹底であり、高齢者・障がい者の利用に適していない。その一因として、供給を行う行政側に、障がいの個別性・多様性に対する対応はハード整備よりも人的サポートによる補完で行えばよい、という考えがあることも否めない。

「重度障害と被災 −地域防災力の向上に向けて−」 櫻井 理
「すべてのバッテリーがなくなり、人工呼吸器が完全に停止してしまうという状況に陥った。だが、直前に母が手動で呼吸を確保する救急蘇生バッグに切り替え・・・ 」

「障害者の災害対策チェックキット −備えを確認するための仮想演習−」 硯川 潤
「社会全体が、障害者を災害時にどう支えるかという問題に答えあぐねている。」

「避難所・応急仮設住宅での障害者・高齢者の生活環境支援 −東日本大震災における宮城県石巻地域での取り組み−」 武田 輝也
「宮城県復興基金事業の取り組みの一つである「リハビリテーション支援事業」は・・・ 作業療法士・理学療法士が所属している医療機関やNPO 等の支援活動に対し活動費を補助し、戸別訪問による応急仮設住宅のバリアフリー化や入居者への日常生活に関する相談に対応するものである。石巻地域では・・・延べ1,300 戸を超える応急仮設住宅において、福祉用具導入や住宅改修が進められた。」

「リハビリテーション専門職による高齢者・障害者に対する災害支援 −熊本地震におけるJRAT の取り組み−」 三宮 克彦
「発災後早期の活動を通して、様々な場面で簡易に使用できる福祉用具の災害時活用の可能性を感じると同時に早急に供給できる体制整備に課題を感じている。」

当事者の工夫、支援する側の工夫、この号にはたくさんの貴重な英知が寄せられています。(編集後記)

追記 著者のひとり、櫻井さまの活動は、4月29日付朝日新聞朝刊にも掲載されています。

J-stageリハビリテーション・エンジニアリング誌