協会誌最新号Vol.33/ No.4 (通巻112号)
特集「人工内耳」

人工内耳

錦秋の候、協会誌33-4号をご案内申し上げます。
「国内における成人と乳幼小児を併せた装用者数は1 万人を軽く超え、20 世紀で最も成功した人工臓器といわれるようになりました。しかしながら、社会的な認知度については・・・。」 (特集にあたって)

「18 歳未満の小児に対する人工内耳適応基準は、…、2014 年に二度目の大幅な改訂が行われた。新しい小児人工内耳適応基準のポイントとして、適応年齢下限が1 歳に引き下げられたことと、両側人工内耳が可能になった。…。図4 …。両側同時人工内耳群の方が片側人工内耳群よりも術後早期の聴覚の発達が有意に早い。
成人人工内耳の適応基準は、2017 年に19 年ぶりに大幅な改訂が行われた。…。この改訂により、今まで補聴器装用効果不十分であるにもかかわらず、適応基準を満たさないために手術を諦めていた高度難聴患者に新たな希望がもたらされた。」(人工内耳の適応と術前の準備)

「1977年…電極を内耳にしっかり固定する方法を開発しようと決心したクラーク教授は、オーストラリア、ニューサウスウエールズ州のミナムラビーチで小さなサザエの殻と1 枚の草の葉から着想を得て、その方法に行き着きました。…。人工内耳は、内耳に障害があり音を電気信号に変換できないときに、聴神経ラセン神経節に直接電気信号を送り聴こえをもたらすというシステムです。」 (人工内耳の歴史としくみ)

「聾学校では手話を含めたトータルコミュニケーションが主流となっているが、人工内耳装用児に対しては、聴覚の活用を意識的に取り組んでいく必要がある。…人工内耳から音が聞こえた日がその子の耳の誕生日である。きこえやことばの力を評価する際にも、耳の誕生日からの聴覚年齢で考えるようにしたいものである。」 (幼小児の人工内耳の(リ)ハビリテーション)

「人工内耳を介した音は、本来は機械的に合成された音であるため、当初は宇宙人が話しているようだとか、チューニングが合わないラジオのようであるとよく表現される。しかし、中途失聴の成人の場合は、脳にことばの記憶が残っており、人工内耳装用後は過去の音像の記憶と、新たな音声入力と照らし合わせることにより、きこえは少しずつ改善する。 (成人の人工内耳リハビリテーション ―臨床的な立場から―)

「私の場合、人工内耳は静かなところでの一対一の会話では非常に有効ですが、環境が悪くなるに従って、言葉はわかりにくくなります。しかし、悪条件下でも全くゼロに等しくなるわけではなく、言葉は理解できなくても音は聞こえるなど、利点もあります。音が聞こえることにより、車の運転も可能になるわけです。また筆談は全く使わなくなりました。」 (不満足?でも役に立つ!(人工内耳装用記))

「息子は1 歳9 か月で難聴とわかり、補聴器をつけ始めましたが、だんだん聴力も厳しくなり、3 歳10か月の時、徳島大学付属病院で人工内耳の手術を受けました。…。中学3 年生では英語弁論大会に出場したり、英語が得意教科と言っていました。…。娘もさらに聴力が厳しくなり2 歳1 か月で人工内耳の手術を受けました。…。今では阿波弁で話したり、電話もスムーズにできるようになっています。手術前には想像もしなかったほど、娘は色々な言葉を話します。私の口調を物まねされたりすると、面白くすごいなあと思う一方で自分の言動には十分気を付けないといけないなと思っています。」 (人工内耳を装用した子供たち―保護者の思い―)

報告では、5月の全国頸髄損傷者連絡会総会大阪大会に関する「頸損連としての社会的役割」、6月の「第55 回日本リハビリテーション医学会学術集会 リハ工合同シンポジウム」、7月の「第25 回日本義肢装具士協会学術大会」がそれぞれ寄稿されています。
福祉機器コンテスト2018受賞作品もお知らせにて紹介されています。
次回の特集は、「 リハビリテーション工学の卒前教育の現状と課題 (仮題) 」です。お楽しみに!

協会誌担当 石濱

J-stageリハビリテーション・エンジニアリング誌