協会誌最新号Vol.34/ No.3 (通巻115号)
特集「障害者スポーツの未来と挑戦し続けるアスリートを取り巻く環境」

人工内耳

34-3号 協会誌のご案内を申し上げます。

「障害者スポーツの未来と挑戦し続けるアスリートを取り巻く環境」です。
「私自身、13 年前に交通事故により、頸髄を損傷し、体の自由を失いました。学生時代はスポーツが好きで、球技が得意でした。まさか自分が交通事故に遭い、体の自由を失うなんていうことは夢にも思っていませんでした。…。体育館や競技場がある地域ではありましたが、障害者スポーツを行っている施設はありませんでした。正直、私はこの体になったことで、もうスポーツを二度とすることもないというふうに、思うぐらいになっていました。たまたま私の相談員さんが、兵庫県立スポーツ交流館があることを教えてくれました。」(「特集にあたって」)

日本における障害者のスポーツの普及と発展を目指す資格には、公認障がい者スポーツ指導者等があります。
「重度な障害者には、更衣、排泄、食事、移乗、移動、体温調整などをサポートする人材は、「スポーツ指導者」と同等の存在です。また、より高度な指導や支援を受けるには、パーソナルな専門スタッフが必要であることも現実です。「資格者」からのサポートは、有償でありながら金銭的代償なし、少ないことで継続した支援が難しくなることもあります。」(「障害者スポーツに関する資格について」)

施設の構造もとても重要です。障害者の方も、スポーツをする際に、健常者と同じように、 安心で施設を利用したいと思っているはずです。同じスポーツであって、誰もが一緒にできるものだからこそ、環境整備を進めていくことが重要です。
「3. 障がいに配慮した主な設備・備品…3.2 ボウリング室…・スロープ(図9)自身での投球が難しい方が使用する。現在は商品として購入することが可能だが、当初は金属加工技術を持つセンター関係者に製作を依頼していた。…管理運営を任されてきた歴代職員も、常に利用者の声を聞き、創意工夫しながら、より安全で使いやすいものを利用者と共に、生み出してきました。最初は手作りであったものが商品化されているものも多くあります。また「電動車いすサッカー」も当時の職員と電動車椅子ユーザーのボール遊びから発展したものです。」 (「大阪市障がい者スポーツセンターの設備・備品について」)

「400m の直線の車いすロードレース体験をバーチャルリアリティで疑似体験できる装置のアイデアを思いつき、…ゲームマシン「サイバーウィル」を開発した。…。現在までに約1 万人がイベントや常設展示などを通じて体験しているが、TOP 10 位の記録保持者は全てパラリンピアンであり、その記録を聞くとほぼ全ての体験者が驚愕するものとなっている。」(「サイバースポーツが切り開く、パラスポーツとテクノロジーの融合による新たな可能性について」)

「現状では、一般社団法人日本車いすラグビー連盟に登録しているクラブチームのほとんどが一般のスポーツ施設ではなく障害者スポーツ施設のみでの練習を余儀なくされています。いくつかのチームが一般のスポーツ施設の利用を申請したが以下のような理由により利用を断られています。
1. ブレーキ時や旋回時による汚れ、転倒による床への傷(図2)
2. 1.の理由により他の利用者が利用する際の事故のリスクが高まる
3. 施設のバリアフリー環境が十分ではないため」
(「車いすラグビーの練習環境の現状」)

「電動車椅子は非常に高額です。障害者手帳で助成金で交付いただけるものだったりもしますが、それはあくまで生活のためであって、スポーツは嗜好品です。フットガードを作成することもお金が必要ですし、やりたいと思ってもそのすぐには始められないことも大きいです。また日本の中で認知度も低いため、国産ではなく海外企業製の車椅子で行われてしまっている競技であるのでお金がかかり、また国内の需要と供給、経済への参加がうまくいっていないことも感じられます。私は競技性が高い国産の電動車椅子が作られるべきだとも考えています。」(「電動車椅子サッカーの練習環境の現状」)

「2020 東京大会を控え、スポーツ活動を通して心身ともに自己研鑽しそれぞれの目的を達成するだけでなく、競技結果としての努力指標を求められることに対して、オリンピックと並ぶべく活動しているパラリンピック関係者としては、スポーツとしての正当な評価に喜びを感じると同時に、過剰な結果至上主義には疑問と危機感を覚えている。障害者がスポーツ活動を通して獲得すべきは、メダルに先んじて生活レベルの向上である。」(「アスリートとしての挑戦、その後の挑戦」)

「障害者スポーツ」というと、どんなイメージされるでしょうか。「障害者スポーツ」とは、障害のある人も取り組めるスポーツのことで、これまで障害のある人のためだけのスポーツと思われてきました。また、日本における障害者スポーツの歴史から、医療におけるリハビリテーションの手段としてスポーツが取り入れられました。1964年に開催されたパラリンピック東京大会により、日本の障害者スポーツがリハビリテーションの重要性に注目するようになってきました。
障害者スポーツに関しては認知度が低く、参加できる場所、ルールがわからない、といった情報の不足に悩むことが多くみられます。 障害者スポーツを取り巻く環境には多くの問題が残されています。障害をはじめ、障害者スポーツへの理解と、障害者スポーツの見方を変えていく必要があります。まずは、障害者スポーツを体験してみることから始めてみてはいかがでしょうか。 (編集委員 島本)

研究報告
「外骨格型ロボット装具ReWalk の使用経験−監視下での施設内外の歩行を獲得した第7 胸髄完全対麻痺者−」
技術報告
「Leap Motion Controller を用いた簡易手関節可動域計測」

連載 「車椅子の歴史 第九回 スポーツで使われる車椅子の歴史」 パラスポーツ関係者にぜひご一読頂きたい文献です。

報告
「ニーズ・シーズマッチング交流会」
「全日本チェアスキーチャンピオンシップin よませ に参加して」
「バリアフリー2019 ワークショップ「電動車いすでどこでも行こう!?ローカル線を乗り鉄旅?」」
「第34 回リハ工学カンファレンスin さっぽろ プレカンファレンス 日本リハビリテーション工学協会・全国頸髄損傷者連絡会 第8 回 合同シンポジウム 「障害当事者こそが変える!人手不足の介護現場〜だれのため?みんなのため!みんなで考えよう!〜」」
が掲載されています。

また、第34回リハ工学カンファレンスに参加される方々におかれましては、最新のプログラム、支部セッション、併催SIG講習会等のご案内を記しております本号を是非お手元に。

次号は、『サイエンスを民主化せよ―インクルーシブデザインラボをめざして―』を予定しております。お楽しみに!

2019/08/06 (協会誌担当 石濱)

J-stageリハビリテーション・エンジニアリング誌