協会誌最新号Vol.35/ No.1 (通巻117号)
特集「自分らしく暮らしたい」
「自分らしく暮らしたい」 白石充
「自分らしく暮らしたい」そのためには何が必要か?「バリアフリー住宅」「福祉用具」が整えば良いのでしょうか?いえ、それだけでは足りません。「買い物は?」「学校は?」「就労は?」「病院との連携は?」「介助者がいないときには?」など、様々な問題をクリアしなければ、本当の意味での福祉住環境は整いません。そこで今回は、ご本人・ご家族が様々な問題をどのように解決され、現在に至っているのか。また、現在抱えている課題をご執筆頂いただきたく特集を組ませていただきました。
「基地(ベース)から行け!」 大泉えり
私が思う娘の幸せとは、「社会に出て、自分の意志で自分の人生を生きること」である。人間のアイデンティティが作られている過程には、「心と体の安全基地」が必要であり、住まいはこの役割を大きく担っていると思う。安心安全な場所があるから、人は外に出て頑張れ、自分を表現できる。そして、社会と繋がって誰かの役に立つことは、人が生きる力になる。
「住まいが変わると、人生も変わる」 相原雅之
私のような重度の障害者が地域で暮らすためには、やはりヘルパーさんや家族に負担の少ない介助が大切です。そのためには、住環境と福祉用具の存在は重要なものです。現在「誰もが、住み慣れた地域で生活できるように・・・」と騒がれている世の中で、福祉用具はせめて柔軟に「部品」交換が可能となり、「どんな家」でも使用が可能であるべきだと思います。そうなれば「在宅生活」がもっと介護者も障害者も高齢者も、互いに楽に生活ができると私は思います。
「ライフタイム・ホームズーライフタイム・デザインの家」 丹羽太一・菜生
「ライフタイム・ホームズ」は、それまでは車いす使用者のための住宅と分けて考えられていた健常者のための住宅を、障害をおったり高齢者になったとしても住み続けられるよう、車いすでも住めるものとして、90年代にイギリスで考えられた住宅設計基準。今回はそれを日本版にアレンジし直したものについて述べさせていただきます。
「リハビリ後の自立就労支援」 樋口健二
私共の活動テーマは一人でも多くの障害者が税金を支払えることを目指し自立・就労支援サポートを行っております。主たる障害者は知的障害者と精神障害者となります。
障害者が生涯に渡り税金のお世話になり続けると、障害の重さにもよりますが、1人辺り数億円の税金が必要とも言われています。そうした方々が働ける様になり、納税できる様になれば、社会貢献と節税効果は絶大といえます。
「人的介護軸から住環境整備とテクノエイド活用軸に転換を」 齊藤三十四
家族や心の通い合う人達と、今まで通りの暮らしを実現するために「住環境整備」「自宅復帰」「地域に生きる」といった生活実現に支障が無ければ良い。
介護保険も20年経過したが、厳しい財政面が明確化、次第に高要介護度者への介護給付に絞り込まれ、環境(自立)介護とも呼べる福祉用具、住環境整備には、目は向かれず、必要なサービスの投入も縮小状況であると指摘されている。今回は、この辺を考察してみたい。
「住宅所有形態が身体障害者の在宅生活に与える影響」 糟谷佐紀
居住を継続するためには、住宅の安定が必要不可欠である。しかし、身体機能の変化に応じた改造ができない、あるいは立ち退き等で居住を継続できないなど、借家に暮らす障害者が不安定な居住を強いられることがある。本稿では持家と借家という所有の違いが、身体障害者の生活に与える影響について検証する。